デザインを「経営」と結びつけ、今だからこそ、必要なことを改めて考え直してみました。
DESIGNER
Y.K.
新しい生活様式になってからもう少しで1年が経とうとしています。
過ごし方に大きく影響され、生活する上で「どこまで対策を行うべきなのか」「ストレスを与えず普段通り過ごせるためにはどのようにすべきか」などいろいろな課題に悩んだり考えたりする時間が前よりも多くなったと思います。
私は「ブランディングを支援する会社として、今だから考え直すべきこと、すべきこと」という課題に対し、「問題解決のためのデザインを経営に結びつけること」を考えました。
新しい生活様式になってから、どこにでも見かけるようになった消毒液。
形状は、手で押すポンプ式の消毒液をよく目にしますが、ターゲットに対して適切なツールかどうか考えてみましょう。
まず「必ず消毒をさせる」ということをゴールとします。
ゴールを作らなければ、真の解決に到達しないからです。
「必ず消毒をさせる意識を向けさせるためにどうすればいいか」という課題に対して以下のように「ハテナ」を作りながら深堀していきます。
①ポンプ式は、幅広いターゲットに対応しているか?
→ポンプ式は、いろんな人の手で触れていることから、敏感な人は避けてしまう
→形状に問題があり
②どんな形状が適切か?
→肌に直接触れないものを選ぶ
1.足で押すポンプ式消毒液
2.センサー式消毒液
→1の場合、幅広いターゲットに適しているか?
→ポンプ式は、押す力が必要なため、年配の方に適していない
→2の場合、幅広いターゲットに適しているか?
→手をかざすだけで消毒ができるため、幅広いターゲットに適している
③カラーは白でいいのか?
→設置場所の壁や床などのカラーがホワイトカラーの場合、同化してしまう
→同化することで気づかない人がでてきてしまう
→どこの場所に設置しても、同化しない目立つカラーはなんだろうか?
→目立つ色として使われる「赤」を用いる
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このように「ポイントとしていることが本当にターゲットに適しているか?」と問いかけながら解決策を洗い出します。
「統一感」を出したい場合は、ブランドカラーを使用。
「安全面」を第一優先にするのであれば、目立つ色として使われる「赤」を用いた方が良いと思います。
このことから今の状況を踏まえ、経営に関わるデザインは「安心安全」について重視する必要があると感じています。対応面やサービスが良くても、問題が解決されていないまま続けてしまうことで「大丈夫だろうか」と不安になります。さらに、信頼性も低くなり、受け止めてくれなくなるでしょう。
今の状況を考慮して、「問題解決」のためには、「デザイン思考を変えていく必要がある」と私は考えました。
積極的に問題解決に取り組んでいる事例をあげ、「経営×デザイン」を深堀していきます。
デザイン事務所「NOSIGNER株式会社」は、今回「DESIGNART TOKYO 2020」合同展示会の「DESIGNART GALLERY」にて、ソーシャルディスタンスをテーマに、社会的な規制ではなく前向きに楽しく取り組められることを目標設定とした企画を立ち上げていました。
床に描かれた大きな楽譜上の音符の上に立つとその音階の音が鳴ります。列に並ぶ人がみんな音符の上に立つことで、自然と楽しくソーシャルディスタンスを保つことができます。曲はエリック・サティの「ジムノペディ」を使用しています。今後は季節やイベント、導入場所に応じた音楽の採用を検討しています。音符は踏んだ瞬間に反応するため、音が鳴るタイミングはその都度変わり、その場/その人たちによってしか演奏されない一期一会の音楽が空間を彩ります。
初披露の場所は、表参道、その次に横浜みなとみらいホールとなっており、それぞれ都心であるため人数も多いです。そのため、来客が多くなることが予想されます。
来客数が多いことに対して「ソーシャルディスタンスを実行する」という課題は、非常に難しい課題だと感じます。 ソーシャルディスタンスを意識すると、今までよりも列も長くなることで、整列させるための場所も確保したり、いろいろな課題と向き合わなければいけないからです。
そんな難しい課題を、NOSIGNERは「どうすればソーシャルディスタンスに人を誘導させるサインが作れるか」をゴールに、たくさんの案を盛り込み、取り組んできたことが伝わりますね。
「誘導するためのサインを作る」ゴールにたどり着くまで、たくさんの問題に立ち向かっていたと思います。
ソーシャルディスタンスをするためには、距離をとって誘導しなければいけない、では、
距離をとるためには、どんなことをしなければいけないのか?
誘導させるにはどうすればいいのか?
距離をとらなければいけないと認識させるためにはどうすればいいか?
本当にこれで距離をとりながら誘導することができるか?などなど…
さらにNOSIGNERは「PANDAID」というサイトを作り、ソーシャルディスタンスだけでなく、新しい生活様式において起きている問題を解決をしようという強い取り組みも行っています。
もし、NOSIGNERのように心強いソーシャルディスタンス企画への取り組みが他でも実施していなければ、「対策ができていない会社・サービス・商品があって大丈夫なのか」と信頼性が薄くなり、経営に結びつかないのだろうと感じます。
このように、良い経営を続けていくための条件の中には、価値を損なわない「安心安全」を考慮した対策が必要なのだと考えられます。
「今後のデザイン思考について、どのようにしていかなければいけないのか」向き合うためには、以下3つのポイントが重要だと考えました。
①誰に向けて作るのか
→ターゲットの特徴を正確に知る
②ターゲットが「どんなことを求めているのか」「どんなことに悩んでいるのか」「どういった場で作るデザインと触れ合う機会があるのか」
→ターゲットの理解を深める
③どのようなデザインであれば彼らの役に立つのか
→ターゲットの望んでいるアイディアを正確に引き出す
デザインを作る際は、常に「人を中心」に考え、人の悩みやニーズを確かめながら進化させていきます。人々が本当に必要としているデザインは何かを追求しながら作り上げていくことが大切だと私は感じています。
製作時の状況や内容によって「問題解決」より「見栄え」を重視されることもあるかもしれませんが、新しい生活様式は、私たちの人生に大きく影響するものです。
会社や商品・サービスを見直す際、人への共感や理解がなければ、真の問題を見つけ出すことができません。
つまり、「人々が新しい生活様式で抱えている悩みは何か」「どのようにしたら人々は買い物を楽しめるか」などといったことに向き合って製作する必要があります。
「人を中心」とした考えで欲求を導き出し、そこに技術と結びつけることで「良い体験が実現するとは思いもしなかった」「このようにしてくれたら私の生活は潤いそう」と人々に満足してもらえる会社・商品・サービスが生まれるはずです。
新しい生活様式に寄り添いながら「人々を支えるためのデザイン」を心がけて、製作していきます。
NOSIGNERによる、ソーシャルディスタンスを楽しく保つサイネージ〈SOCIAL HARMONY〉
https://mag.tecture.jp/product/20201110-17342/
尾崎美穂(2020) 『経営とデザインのかけ算 企業を進化させる「デザイン思考」と「ブランディング」』,合同フォレスト株式会社
今日もあなたに気づきと発見がありますように
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