• Vol.121
  • BRANDING
  • 2021.01.26

人の心を動かすブランディング

近年、企業や個人がSNSを使ってコミュニケーションをとることが増え、消費者の動向が変わってきたように思います。そこで、今後企業やブランドはどのようにブランドを広め、ファンを作っていくのかについて考えていきたいと思います。

PLANNER

R.Y.

SNSの利用が当たり前となった今、起きている消費者の変化とは?

SNSの利用が当たり前となった今、起きている消費者の変化とは?

スマートフォンが登場したことによって、ビジネスを取り巻く環境が大きく変わりました。今までは、企業が広告などで一方的にメッセージを発信し、消費者を惹きつけるというような方法が行われていたと思います。

しかし、今ではSNSの普及により、消費者側から発信できるようになり、格段に情報量が増えました。個人が欲しい情報や多くの情報を得ることで、欲しいものもすぐ手に入りやすくなり、消費者の購買行動も変化してきたのではないかと感じています。近年、クオリティの高いモノや技術だけでは売りにくくなり、モノづくりが提供する「機能的な価値」だけでは戦いにくくなってきました。そこで今後重要になるのが、どうやってブランドを認知してもらい、消費者とブランドとの間にストーリーを作っていくのかということです。その時に影響力を持っているのがSNSで、そこから得る視覚的情報は、瞬時に情報収集ができるユーザビリティの高い、身近なコミュニケーションツールであるといえます。

今は企業やブランドと、消費者一人一人が直接つながることのできる時代となり、誰でも情報発信ができ、主役となれる時代になりました。消費者の体験や、評判などの口コミも、大きな影響力を持つようになってきているといえます。このように、SNSによって消費者が発言力をもった今、ブランドは企業がコントロールして作り上げていくものではなく、一人一人のステイクホルダーによって、作り上げられるようになったのではないかと思います。

このような背景から今後は、SNSを通して「体験してみよう」というタッチポイントを増やして、ブランドの価値につなげていくことが重要で、その価値を維持し、向上させることで購入につながり、リーピーターとなって信頼を獲得していけるのではないかと思います。SNSが自己表現の場となったことで、ユーザーの基準は、インスタグラムに映えるか、そして見てくれている人に面白そうなものを伝えたい、自分がいいと思うものを勧めたいというような視点になり、モノやサービスを購入したり、色んな場所を訪れたりするという人も少なくないのではないでしょうか。ですので、企業はモノやサービスを「売る」ことをゴールとするのではなく、どうすれば広めてもらえるのかという「推奨」までを意識して、ブランディングをしていく必要があるのです。

ブランディングは、信用を定着させていくこと

ブランディングは、形のない価値を様々な方法で生み出すことだと考えています。それは感情的に支持されていたり、信用(価値)を定着させていく活動のことです(◯◯といえばあの商品といったような意識)。もちろん商品のデザインやロゴ、キャッチフレーズはもちろん、InstagramをはじめとしたSNS運用まで、様々なものがブランディング活動だといえますが、人はモノやサービスを購入したり、利用した先にある体験やストーリーに、心が動かされていくのだと考えています。

今では、企業やブランドがSNSを運営しているところが増え、様々なブランディングが行われています。企業やブランドのSNS活用というと、商品情報の発信などをイメージされると思いますが、それだけではなく、ユーザーと近い距離感でその企業やブランドらしさを発信することで、ブランディングの効果が現れてきます。影響力のあるSNSの中でも、とくにInstagramに力を入れている企業やブランドをよく見かけますが、企業やブランドが Instagram を運営するメリットとして

  • 無料でサービスが使える
  • 手軽に自社のアピールが行える
  • ユーザーと身近にコミュニケーションが取れる
  • 画像や動画などのビジュアルにも特化しているので、ブランドを分かりやすく、印象に残りやすいアピールができる

といったことがあげられます。
また、企業と直接関係がないインフルエンサーや、一般の消費者が発信してくれるので、信憑性が高くなるといったメリットもあります。情報のやりとりを行うなかで、人は文章よりも視覚的な情報から得たイメージの方が、記憶に残りやすいと言われていて、ビジュアルイメージを発信しつづけられる Instagram は、宣伝効果を狙うだけでなく、独自のブランド価値をユーザーに定着させていくのに最適なのではないかと思います。

企業(ブランド)の Instagram活用例

北欧、暮らしの道具店

北欧、暮らしの道具店は、北欧食器や家具などを販売するECサイトです。オウンドメディアとECを連携させた成功事例として知名度が高く、107万人以上のフォロワーがいます。その背景は、商品を売るのではなく、北欧の食器や家具に囲まれた生活など、ブランドの美しい世界観を伝えているというところにあると思います。また1日にいくつもの記事を投稿したりと、地道な積み重ねがコアなファンの心をつかんでいくのだと思います。

できら②5W1Hをたた

北欧、暮らしの道具店

出典:https://www.instagram.com/hokuoh_kurashi/?hl=ja

ハーゲンダッツジャパン

ハーゲンダッツジャパンの Instagramアカウントは、約25.1万人と多くのフォロワーがいます。ハーゲンダッツは単なる情報発信ではなく、ユーザーがコンテンツを投稿したくなるような、ユーザーを巻き込むキャンペーンなどの発信がうまくされています。その中でも反響があったのが、「幸せのハーゲンハート探し」というカップの天面に現れたハートをSNSでシェアするキャンペーンです。ハーゲンダッツのカップは、ふたを開けるとハート型のクレーターが現れることがあり、これをファンの人たちが自発的に「アイスクリームの天面がハートだった」というような発見を、SNSに投稿してくれることが多かったそうです。この動きから、「ハーゲンハート」キャンペーンが始まりました。

「ハーゲンダッツジャパン」

ハーゲンダッツジャパン

出典:https://www.instagram.com/haagendazs_jp/?hl=ja

ブルーボトルコーヒージャパン

ブルーボトルコーヒージャパンの Instagramのアカウントは、約15.1万人のフォロワーがいます。ブルーボトルコーヒーといえば、水色と白をブランドカラーとしたシンプルな清潔感のあるロゴが特徴です。
日本初出店した際は、インスタグラムのアカウントから、店舗を準備している様子などを発信して、オープン後すぐたくさんの人の行列を作りました。また、投稿されるユーザーの生の声を活用することで、多くのユーザーの来店を促しているように思います。投稿にはもちろん商品の紹介もありますが、オープン前の店舗内やスタッフの笑顔、研修中の様子なども投稿されています。そうした、普段見ることができない裏側を見せることで、ユーザーに安心感や親しみを感じさせ、ブルーボトルの理念である「ホスピタリティ」という面での強みが伝わり、信用を得てファンを増やしていけるのだと思います。

ブルーボトルコーヒージャパン

ブルーボトルコーヒージャパン

出典:https://instagram.com/bluebottlejapan?igshid=1lzkv88j4n3yw

Tasty Japan

Tasty Japanは、アメリカ発のWebメディア『BuzzFeed』が運営する「見て幸せ、作って楽しい」をコンセプトとしている、料理動画メディア『Tasty』の日本版です。フォロワー数はなんと670万人以上で、国内のすべての企業アカウントで、フォロワー数第1位となっているアカウントです。その理由として、2〜3分程の見やすい料理動画コンテンツで、つい「食べたい!作ってみたい!」と思ってしまうような動画がユーザーの心を鷲づかみにしています。
ちなみに、アカウントのトップページには「料理を作ったら #tastyjapan をつけて投稿してくださいね」と記載し、ユーザーの行動を誘導しています。そうすることで、料理を作ったユーザーが、「#tastyjapan」のハッシュタグを付けて投稿するので、情報の拡散が可能です。また、アカウントのトップページのハイライトに、ユーザーに向けて企画のアイディアも募集していたりと、ユーザーとのコミュニケーションをきちんと行っているところが、Tasty Japanが多くのユーザーに親しまれている要因なのだと思います。

おいしい日本

Tasty Japan

出典:https://www.instagram.com/tastyjapan/?hl=ja

このように企業やブランドが、ユーザーとコミュニケーションをとったり、実生活で活かせるような悩みを解決してくれる「有益コンテンツ」の投稿がファンを増やしているのだと考えています。投稿を持続的に発信することは、ブランドを認知させ、ブランドイメージの向上や、ブランドに対する信用の定着にも繋がります。

企業はモノが売れなくなると、原価やクオリティを下げたりと、ブランディングの価値を低くしがちです。ところが、物を売ろうとすればするほど、物は売れなくなります。重要なのは、モノではなくその先にある体験や感動を提供し、ストーリーを作っていくことなのだと思います。

企業やブランドは、ユーザーが自社の製品と関わりを持つことによって感じられる価値を、どうデザインしていくのかが重要で、「使いやすい、嬉しい、楽しい」というような体験・感動を提供し、ユーザーに満足してもらうことで売り上げの向上に繋がり、製品やサービスへの共感や信頼も生まれ、繰り返し購入してくれるようになるのではないでしょうか。自社にしかない体験を提供すれば、他社にはない大きな強みとなります。そして、そこでしかできない体験、価値があるからこそ、それを求めてお客さんがやってくるのです。

まとめ

企業やブランドの存在意義を明確にする

ややブランドの立ち始めます

どんな企業やブランドにも想いやビジョンはあると思います。消費者の動向が変わり、機能的な価値による差別化が難しくなった今、消費者の心を動かすためには、企業やブランドが誰の、何のために存在しているのか、そして今後どのような世界を実現していくのか、などを明確にしていく必要があると思います。

ストーリーを作る

ストーリーを

ブランディングとは、どうやってブランドを認知させ、消費者とブランドのストーリーを構築して、差別化し、定着させていくかということだと考えています。差別化し、定着させることで、価格競争などの負のスパイラルに巻き込まれなくなり、エンドユーザーと強い共感が得られることで、購買に繋がるきっかけとなるのではないのでしょうか。
例えばInstagramでいうと、ハッシュタグ機能というものがありますが、ユーザーがハッシュタグをつけて投稿することで、ユーザーは企業やブランドに、自分の投稿を紹介されることがあるかもしれません。そして、企業はユーザーからのコメントや発信などに返信していくことで、ユーザーと一緒に創り上げていくこともできます。

消費者とともに伴走し、共創していく

消費者消費走し、共創

SNSの利用が当たり前となった今、ブランドの想いを伝え共有し、ともに伴走していくことが大事で、そうすることでブランドと消費者との絆は、より深く信頼を獲得することができるのではないでしょうか。消費者の感情の動きを掴みながら、「消費者と一緒にブランドを育てていく」ということが大事なのです。
InstagramなどのSNSを通して、双方向のコミュニケーションを活性化し、企業と消費者という構図を超えて、共にブランドを創っていく。このような「共創」がテーマとなって、消費者と気持ちがつながることで、一緒になって想いを伝え、共創者となってくれるのではないでしょうか。そうした活動を通じて人は心を動かされ、最終的にファンを作っていくことができるのだと考えています。

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